静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

フリーランスのイラストレーターの法律問題(1)ー取引先がお金を払ってくれない

イラストを完成させたのに取引先がお金を払ってくれないという事態に対してどうすれば良いでしょうか。

 

【まずは予防】

イラストの作成は請負契約と解釈されることが多いと思いますので、仕事の完成によって代金を支払ってくださいという権利が発生することになります。しかしイラストを完成させた後に取引先が支払ってくれない場合、回収にたいへん手間がかかってしまうこともありますから、できるだけこれを防ぐことが大切です。

 

  • 取引先の会社を訪問して相手をよく知る

 少額の取引の場合はメール等のやり取りだけで仕事を受けることもあると思いますが、取引金額が大きくなるときは、取引先を訪問して相手の様子をよく観察してください。

何かおかしいなと思ったら取引を中止する勇気も必要です。

 

  • 契約書を作成する

まずは最低限

仕事の内容と対価、

納品の方法や支払の方法等

を定めた契約書を締結し、代金請求の根拠を証拠化しておきましょう。

 

  • 前金制

例えば少額の場合は全額前金制にする、

取引回数が少ないうちは前金制にする、

多額の場合は半額は前金制にする、

等のルールを定めておけば仕事をする前に支払いを確保できます。

 

  • 会社代表者個人等の連帯保証をお願いする。

保証人は人的担保と言われるもので、例えば契約の相手が会社の場合、代表者等の個人を連帯保証人にしておいてもらうと、会社が支払いをしない場合、保証人にも請求ができます。契約書に保証人との保証契約も盛り込んでおく必要があります。

 

  • 取引先の取引口座等財産を把握しておく。

イラストを作成して代金を支払ってもらうだけだと、こちらの口座の情報は取引先に教えますが、取引先の口座等の財産に関する情報は把握しないままということが通常だと思います。しかし、関係が良好なうちに取引口座等財産の情報を把握しておくことは重要です。

イラストが完成して取引先が代金を支払わなくてはならないにもかかわらず、支払ってくれない時は、必要があると認められる時は取引口座等の財産を仮差押という手続で凍結してしまうことができることもあります。あくまで仮の手続なので、その後本番の訴訟を起こす必要がありますが、経済活動を行う上での信用の失墜にもつながるので、仮差押をした時点で問題が解決することもあります。

仮差押は担保をたてる必要があり、専門家に依頼する必要もあり、また満たすべき要件もあるので、簡単にできるものではありませんが、取引口座等の情報を把握されていること自体が取引先にとっての支払いのインセンティブになることもあると思います。また、訴訟で判決をもらっても、その後、強制執行をして回収を図るためには、結局財産がわからないと何もできませんので、そのためにも関係が良好なうちに情報を把握しておくことは大切です。

 

【それでも支払ってくれないという事態になったら】

内容証明を送って支払いを請求し、それでも支払ってくれない場合には訴訟等の法的手段を利用することになります。

定型の内容証明であれば、弁護士に依頼をしてもそれほど高額の費用はかからないことが多いと思います。他方、弁護士名で請求が来ただけで、それまで支払を渋っていた取引先があっさり支払をしてくれることもあります。専門家にお願いする場合も、契約書等請求の根拠を示す証拠が大事になりますので、お仕事の際には、必ず書面で契約の内容を明らかにすることを是非是非オススメします。