静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

フリーランスのイラストレーターの法律問題(2)ーイラストを作成したらどんな権利が発生するの?

イラストを作成したらどんな権利が発生するのでしょうか?

イラストレーターにとってイラストは可愛い子供であり、商品であり、ブランド価値を高めるものですから、意に反したことをされないように予防するとともに、おかしいと思ったら根拠を示して主張できるようにしておくことも大事なのではないでしょうか。

どんな権利があるのか、どのようなときに権利を行使できるのかを理解しておくことによって、契約内容を工夫して揉め事を防いだり、変だと思ったときに、根拠を示してやめてくださいと請求したり、損害が生じている場合には損害賠償を請求することができます。

 

(著作物を創作すると・・)

イラストは美術の著作物にあたることが多いと思います。

だれが描いても同じような表現になるときは著作物とは認められませんが、イラストの場合はそのようなことは少ないかもしれません。

 

著作物を創作した者には著作権著作者人格権という権利が帰属します。

 

著作権

著作権は権利の束と言われ、勝手な複製(コピー)、インターネットでの送信、翻案(ほんあん)などに対して、差止や損害賠償請求をすることができます。

あなたがオリジナルで描いたイラストについて、勝手にコピーされたりしたときはやめてくださいということができますし、コピーによって損害が生じていればお金を払ってくださいということができるのです。

翻案(ほんあん)というのは、複製(コピー)ではなく、原作を映画化する時の原作と映画の関係のように、新たな創作が付加されているものの、二次著作物から原著作物の特徴を直接感じることができる状態のもので、このように二次著作物を作ることを翻案(ほんあん)といいます。

 

著作権は譲渡することができますが、譲渡しない限り、著作者に帰属しているのです。

イラストのお仕事を納品したからといって著作権が自動的にお客さんに譲渡されるようなことはありません。

ただお客さんの方で、イラストをお願いしたのはこちらなのだから、納品されれば著作権も譲渡されたと勘違いされることもありますので、揉め事を防ぐために、念のために契約書や納品書に、著作権を譲渡しない旨を明記しておくと安心だと思います。

 

著作者人格権

著作者に帰属し、譲渡することができない権利が著作者人格権です。

 

同一性保持権・氏名表示権・公表権という3つの権利から構成されています。

特に大事なのは同一性保持権で、勝手にイラストを改変されたとき(例えばイラストの上部を勝手にカットされた等)には、同一性保持権に違反することを理由に差止や損害賠償を請求することができます。

 

著作権の譲渡をするときにはここに注意)

著作権を譲渡する場合には、その旨お客さんと契約を交わすことなります。

このとき、もし「著作権を全て譲渡する」という契約を締結した場合であっても、翻案権を譲渡する旨が記載(特掲(とっけい))されていない場合は、翻案権は譲渡したことになりません。したがって、特掲がなければ、著作権の譲渡をうけたお客さんでも、二次著作物を創作した場合には、翻案権に基づいて、やめてくださいと言うことができることになります。

 

著作権の譲渡の際には、上述のように翻案権(著作権法27条)と、ここでは詳しく触れませんが、二次著作物に関する権利(著作権法28条)に関して特掲すると共に、著作者人格権を行使しないという条項が入っていることが多いです。これによって原著作物をモデイファイしても著作者は権利を行使できなくなるのです。

著作権を譲渡するときには、27条に関する特掲と、著作者人格権を行使しない旨の条項が入っているかをチェックしてください。コピーは良いけれど勝手に変えられるのは困るというときは、気をつける必要があると思います。