静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

自己紹介記事

静岡発明協会で載せて頂いた自己紹介記事を再掲します。

このかわった経歴を生かして面白いことができたら楽しいなあと思います。

 

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化学を学んで,メーカーで研究をした後,弁理士になって,弁護士になりました。

静岡のぞみ法律特許事務所 弁護士・弁理士 坂野史子

 

  1. はじめに

 私は,理系の大学を出て,メーカーに就職し,弁理士試験に合格して弁理士になり,法科大学院に行って司法試験に合格しました。司法試験に合格すると,司法修習生になり,1年間研修を受けますが,このとき静岡地方裁判所の配属を希望し,静岡に引っ越してきました。現在は静岡市で弁護士・弁理士として活動しています。本稿では私の少し変わった経歴について振り返ってみたいと思います。

 

  1. 弁理士になる迄

 私は,大学で化学を学んだ後,食品添加物等を製造・販売するメーカーで乳酸やピルビン酸の誘導体等の研究をした後,特許事務所に転職しました。特許事務所では特許技術者として化学や光ファイバ等の技術の特許出願明細書を作成する仕事をしていました。

 転職してから3年目に同僚に誘われ,なんとなく「仕事の役に立つならいいかなあ。」と思って予備校の弁理士試験の初級講座に通い始めました。初級講座では先生から,とにかく「素直であること」が重要だと言われましたので,単純な私は先生に言われるままに休まずに講座に通い続け,予習・復習やときどき行われるミニテストの勉強をしました。ミニテストの結果はその度に発表され,上位に名前が乗り,自分ではちょっとびっくりしていました。「ミニテストが上位の人は初級のゼミに参加できる。」と言われたので,これも言われるままに参加しました。初級講座が終わった3ヶ月程後に弁理士試験の一次試験を受験しました。初級講座やゼミで言われることしかやっていなかったので,本人も受かる気持ちは全くなかったのですが,これも先生に「必ず受験するように。」と言われたので,まったくの物見遊山気分で参加し,結果は見事に惨敗しました。試験の後,予備校では中級や上級のゼミの入ゼミ試験が行われましたが,これも惨敗でした。しかし,「もう1年はやってみようかな。」と思い,2年目も継続することになったゼミに参加し,みんなが受けている予備校の講座も受けて,受験勉強を続けました。1回目の試験で同じゼミの人が最終合格したことも励みになり,なんとか2回目の弁理士試験に合格することができました。平成12年のことでした。

 

  1. 弁理士になった後

 弁理士になったとたん,自分が特許技術者を連れて相談者の前に出る機会が多くなったり,窓口を任されたりするようになりました。色々聞かれても,受験勉強で使っていた難しい専門用語は出てきますが,分かりやすく,事例にそって答えることができません。わかりやすく,誰でも腑に落ちるように説明するにはどうしたらいいのか必死で考えました。特許庁から出ていた審査基準を首っ引きで読んだり,メーカーの知的財産部出身で技術者とのやりとりに長けている同僚にアドバイスをもらったりしました。

 また,平成15年から,日本弁理士会が行う講習を受けて試験に受かれば,弁護士と一緒に特許権等の侵害訴訟の代理ができるようになるという制度がスタートしましたので,平成16年に講習を受講し,試験にも合格しました。このとき講師を担当したのは皆弁護士の先生で,なんとなく「まだまだ知らない世界がいっぱいあるんだなあ。」と思いました。

 

  1. 法科大学院

 そうこうするうちに,法科大学院がスタートしました。

 世間では特許等を出願するだけではなくて,取った権利を行使するということに注目が集まり,特許事務所でも特許権侵害に関する相談や共同研究開発についての相談が多くなっていましたが,弁理士としての知識だけではなかなか対応できないこともあり,悩むことが多くなってきました。そこで,自分が窓口を担当していた会社の仕事が軌道に乗ってきて一区切りついたこともあり,特許事務所を退職し,法科大学院で勉強することにし,いったん弁理士登録は抹消しました。

 法科大学院では司法試験の受験に必要な憲法民法・刑法等の法律科目を中心に勉強しました。法律の勉強を開始した当初は,日本語なのにちんぷんかんぷんで,言葉や習慣の違う外国に迷い込んだようでした。先生も厳しく,授業中や通学の電車の中で涙が止まらなくなることが何度もありました。その中でも選択科目の特許法著作権法の授業は,数少ないリラックスして楽しめる授業でした。

 

  1. 司法試験

 法科大学院を卒業し,なんとか司法試験に合格しました。

 

  1. 司法修習

 司法修習生として希望どおり静岡地方裁判所に配属されることになったため,静岡に引っ越しました。司法修習では裁判所,検察庁,弁護士事務所を順番にまわって勉強しました。司法修習の最後には埼玉県和光市司法研修所で卒業試験があり,これに合格できないと弁護士登録ができないのですが,なんとか合格することができました。

 

  1. 弁護士・弁理士

 気候が温暖で街がきれいで人もやさしい静岡に帰ってきたときには本当にほっとしました。

 静岡に帰ってきて弁護士登録と弁理士の再登録をしました。

 現在は,知的財産権に関する相談や,その他の色々な事件を担当しています。

 特許や意匠を出願して権利を取得したり商標を登録してブランド戦略に励んだりする行為には費用がかかりますが,知的財産権に対する意識の高い会社であることをアピールできますし,交渉を有利に進める材料にもなります。他社が自社の商品と似たものを販売していた場合に,登録した権利があればやめさせることができますが,登録した権利がなければ,本来市場での競争は自由なので,不正競争防止法等の特別の要件を満たさないとやめさせることができませんから,せっかく自分で考えたアイディアが勝手に使われているのを,指をくわえて見ていなければならないとか,汗水たらして育てたブランド価値が毀損されてしまうなんてことも起こりかねません。また特許権意匠権の取得や商標登録を行っている企業だということが業界に知られるようになれば,ライバル会社も簡単に真似をしたりすることができなくなるということもあると思います。そのため,自社の権利を取得した後は,自社の権利を侵害している者に対しては,権利行使を怠らないという姿勢も重要です。また,他社の特許等を使いたいときに,自分の権利が何も無ければ一方的に実施料を支払う必要が生じますが,自分の権利を相手も使いたい場合は,お互いに実施権を許諾し合うクロスライセンスをすることができますので,交渉を有利に進める事が出来る場合もあると思います。

 したがって,特許や意匠の実施料や商標の使用料が入ってくるような目に見えやすい利益を生み出すことがなくても,特許や意匠の権利を取得したり商標登録をしたりして権利を有効活用することは商売をやっていく上で重要です。なお,特許や意匠は新しいものでなくては権利が取得できませんから,商談する際には秘密保持契約を結ぶことを習慣にしておくことも必要ですし,共同開発を行うときには,知的財産権の帰属について契約で明確にしておくことも重要です。

 このような知的財産権が問題となるあらゆる場面に対応できることが,理系の弁理士・弁護士の強みではないかなあと思っています。