フリーランスのイラストレーターの法律問題(5)・・使用許諾と著作権譲渡の違い
先日,知り合いのイラストレーターに取引先との契約書を見せてもらいました。
・一つは使用許諾契約書と記載されており,取引先はイラストレーターからイラストの使用を許諾される立場であり,取引先がイラストを使用できる範囲が明記されています。
・一つは委託業務契約書と記載されており,イラストレーターが取引先に著作権を譲渡すること(著作権法27条・28条を含む)と記載され,イラストレーターが著作者人格権を行使しないという条項が入っていました。
同じイラストの仕事でも,上記の二つはイラストレーターの権利が大きく異なります。
前者はイラストレーターに著作権が残り,また著作者人格権も行使できますので,例えば取引先が使用許諾した範囲を超えてイラストを使用したり,勝手に改変したりしたときには,著作権の行使や著作者人格権の行使により差止や損害賠償を請求できるのです。第三者が勝手にそのようなことを行った場合も同様です。
しかし,後者は著作権は取引先に譲渡し,しかも著作者人格権を行使しないという約束をしてしまっていますから,どのような使い方をされようと,イラストレーターは何もできないのです。
唯一取引先ではない第三者が同一性保持権等の著作者人格権を侵害した場合には,権利行使ができる程度です。
この違いは非常に大きいです。
後者のような契約についてよしとするなら,対価を高くしてもらう等のバランスをとる必要があるでしょう。
イラストレーターと話しをしていて,大学等では著作権について学ぶ講座はなく,イラストレーター等のクリエーターになった後も学ぶ機会はあまりないようです。
このような知識は仕事をする上で非常に重要だと思います。
契約は是非専門家と相談しながら進めるようにして頂きたいと思います。
その他にも契約にあたって気をつけるべき条項がありましたので,続きはまた記事にします。