静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

フリーランスのイラストレーターの法律問題(6)・・著作権と意匠権・商標権の関係

(相談)

1 依頼者に依頼されて創作したキャラクターやマーク等を発表して商品化等していました。

依頼者は,私から著作権の譲渡を受けていました。

ところが,他者が,依頼者の商品を見て,依頼者が使用している商品・役務と同一・類似の範囲で商標出願をし,登録してしまいました。

依頼者や私は何もできないのでしょうか。

 

2 依頼者に依頼されてキャラクターやマーク等をデザインをしていました。依頼者とは秘密保持契約を締結していました。

著作権を依頼者に譲渡していません。

 ところが,依頼者が勝手に著作物の公開前に意匠登録出願をし,登録を受けてしまいました。私は著作権を持っていると思いますが,何もできないのでしょうか。

 

(回答)

1について

まず,商売をするなら,商標登録は是非検討しましょう。

商標法には,出願時に周知であれば使用していた範囲で標章を使用し続けられる先使用権が認められますが(商標法32条),周知性の立証が容易とは言いがたいですし,せっかくブランドを育てるならば,商標登録をうけてブランドを大事に安全に育てていくのが得策だからです。

 

商標権については,他人の著作権と抵触する範囲での使用が制限されています(商標法29条)。したがって,そもそも商標権を登録しても,著作権と抵触する範囲では使用することができないのです。

 

依頼者は著作権に基づき,商標権者による商標の使用を差止・損害賠償を請求することができます。

 

また,改変がなされている場合には,イラストレーターには著作者人格権が帰属していますので,イラストレーターは同一性保持権(著作権法20条)に基づき,差止・損害賠償を請求することができます。

 

2 意匠権についても,他人の著作権と抵触する部分については抵触する範囲での業としての実施が制限されます(意匠法26条)。

 

イラストレーターは著作権を有していますので,著作権に基づき,依頼者に差止・損害賠償を請求することができます。

 

 

上記のようなトラブルを防ぐためには,契約書において,著作権に関する帰属や使用許諾に係る規定だけではなく,意匠出願や商標出願をどうするかということを規定した内容を盛り込んでおくことが考えられます。

 

フリーランスイラストレーターと話をしていると,契約書を作成していない場合も多いようですが,少なくとも著作権著作者人格権や秘密保持についてきちんと決めておかないと後でトラブルになります。

 

また,イラストレーターにおいて,できれば意匠権・商標権についても,将来的にどのような形で商売を展開するかも見据えて,依頼者と協議をできるような知識を蓄えておくことが重要ではないでしょうか。

イラストを提供するだけではなく,商品展開に関する権利についても依頼者と協議をし,一緒に商品等をブランド化し,育てていければ,フリーランスイラストレーターの依頼者から見た際の価値も大きく向上するものと思います。