静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

イラストレーターがイラストをネットで転載されたことについて,損害賠償30万円が認められた事件

イラストレーターがイラストをネットで転載されたことについて,損害賠償30万円が認められた事件です。

 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/021/088021_hanrei.pdf

 

イラストレーターが自分のイラストを複製・公衆送信された場合に権利主張をすることが重要であることを改めて確認する上で重要かと思います。

 

原告はカラーイラスト1点の使用料相当額年間10万円を主張し,使用料相当額合計90万円及び弁護士費用9万円を請求していました。

裁判所が認めたのは,30万円でした。

理由は,イラストレータが出版社等から受けていたイラストの値段に加えて,

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一つのテーマをめぐる複数の個別のイラストからなり,他人を笑わせる要素も含まれているもので,カラ ーで描かれた漫画に準じる部分があるとも理解できることや,漫画をウェブサ イトに掲載するに当たっては一定の掲載期間を前提とした使用料が定められ ていることなどの事情を総合的に勘案すれば,原告が本件各イラストの使用に 対し受けるべき金額は,イラスト1点につき1年当たり3万円とするのが相当 である。

最高裁判所 裁判例集

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とされています。

 

被告が侵害により利益を得ている場合には著作権法114条1項・2項により,原告または被告の利益の額から損害額が推定されますが,インターネットで公開した場合には114条3項に基づき使用料相当額が損害額となり,その場合には,原告の原稿料が斟酌されるということが示されていることになります。

 

その他の論点として,被告が投稿(公衆送信)を行った者ではなく,サイトの管理者であった点です。

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 被告は「ニュースちゃんねる」と題するウェブサイト(以下「本件サイト」10 という。)の運営に関与する者である。本件サイトは,主に他のウェブサイトに 掲載されている文章や画像を転載するというものである。

最高裁判所 裁判例集

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この点については,以下のように判示して被告の責任を認めています。

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被告は形式的にも実質的にも本件サイトの運営において重要な役割を担っていたというべきであるから,少なくとも,本件記事の投稿等について共同不法行為に基づく法的責任を負う立場にあったものと認められる。

最高裁判所 裁判例集

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サイトの管理者に対して共同不法行為に基づく損害賠償請求が認められることを示したものとして参考になるものと考えます。