静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

特許権移転登録手続等請求事件 (セリックス対アサクラインターナショナル)

被告が製品開発を依頼し,原告が発明をした製品について,被告の冒認出願であることがみとめられ,被告が取得した特許権の原告への移転請求が認められた事件です(争点1)。

争点2として,弁護士費用等のみを損害とする不法行為に基づく損害賠償請求の可否がありますが,これについては棄却されています。

 

平成 29年 (ワ) 10038号 特許権移転登録手続等請求事件

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/107/088107_hanrei.pdf

 

原告が発明をしたきっかけは,被告による「このような製品はできないか」という問いかけであったのですが,具体的な課題を見いだし,具体的な構成を発明をしたのは,原告であったということが認められたものです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

平成26年3月7日,原告代表者は,被告代表者のもとを訪れて雑談して いる際に,被告代表者から市場のニーズに適合した自動洗髪機が存在しない25 旨の話を聞いた。原告代表者が原告の技術によれば被告代表者の望むような 自動洗髪機を製造開発できる旨を伝えたところ,被告代表者は,原告代表者 7 に対し,自動洗髪機の開発を依頼した。

最高裁判所判例集

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

判決文を見ると,発明者と認められた原告の日報や図面が証拠として提出され,被告が作成した図面も提出されていますが,これは当該原告の図面をほぼなぞったにすぎないとされています。被告は準備書面でもこれをほぼ認め,尋問でもでもほぼこれを認める供述をしてしまっています。

裁判の経緯をみると,発明に至る過程を日報や図面に残しておくことが重要であることがわかります。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

本件訴訟において,被告は,当初,全体構想計画案は,被告代表者がこれ に先行して作成し原告代表者に提示した図面(乙3)や被告代表者の説明を ほぼなぞっただけのものにすぎないと主張し(答弁書6頁),乙第3号証の10 作成時期を平成26年3月頃とする証拠説明書を提出した。

しかし,原告が,乙第3号証の図面には,全体構想計画案を構成する甲第 2号証の1の図面を複製・修正して作成されたものであることを示す複数の 痕跡が残されている旨を指摘して,乙第3号証は全体構想計画案より後に作 成されたものである旨主張したところ(原告第1準備書面4頁以下),被告15 は,乙第3号証の作成日に関して,これ以上争わないと主張するに至った(被 告第2準備書面2頁)。

その後,第1回口頭弁論期日の被告代表者本人尋問において,被告代表者 は,乙第3号証の図面は,全体構想計画案を構成する甲第2号証の1の図面 を使って作ったものである旨を供述した。また,上記答弁書の記載について,そのような説明を被告訴訟代理人に説明した記憶はなく,乙第3号証の作成 時期につき平成26年3月頃と説明していない旨も供述した。

最高裁判所判例集

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

このような裁判の経緯に鑑みると,移転登記請求が認められることは尋問前にほぼ勝負が付いていたように思われます。