静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

JAL 対 南急事件・・商標権侵害・不正競争防止法2条1項1号の判断をせずに不正競争防止法2条1項2号のみを判断し、差止を認めた事例

JALの鳥のマークが似ていて、文字は「JAL」ではなく「南急」となっていたという標章について、JALが訴えた事件です。

 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/015/088015_hanrei.pdf

気になる点は以下の点です。

 

1 商標権侵害,不正競争防止法2条1項1号違反も主張されていましたが,裁判所は不正競争防止法2条1項2号のみを判断した

 

2 差止のみみとめられており,損害賠償請求はされていない点

 

第1の点について裁判所は以下のように判示しています。

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不競法 2条1項1号の不正競争においては,混同が発生する可能性があるのか否かが重視されるべきであるのに対し,同項2号の不正競争にあっては,著名な商品等表示とそれ を有する著名な事業主との一対一の対応関係を崩し,稀釈化を引き起こすような程度 に類似しているような表示か否か,すなわち,容易に著名な商品等表示を想起させる ほど類似しているような表示か否かを検討すべきものであるから,被告指摘の事情 類似性の判断に影響を与えるものではなく,失当である。

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・流石に社名である文字が「JAL」ではなく「南急」の場合に混同が生じるとは言いがたい

・そうだとすると商標権侵害と混同要件の入っている不正競争防止法2条1項1号は難しい

・したがって不正競争防止法2条1項2号で希釈化(ブランド価値の毀損)でいく

 

ということで,不正競争防止法2条1項2号のみで判断をしたということだと思われます。

 

フランク三浦事件は商標権侵害のみを主張し,不正競争防止法違反については主張していなかったところ,フランク三浦はフランクミュラーのブランド価値の毀損であり,不正競争防止法違反であるという論者もいますので,少し有名だと思ったら,商標権侵害だけではなく,不正競争防止法2条1項1号・2号とを抱き合わせにするというのは,スタンダードになっていくように思います。

 

個人的には登録制度を持たない不正競争防止法に強大な権利行使を認めるのはどうかと思いますが,時代はそのように動いているのではないかと思います。

 

第2点については,損害論まで本気でやると本当に大変で時間がかかることを考えると,訴訟自体が1年という短期で終結している理由はここかなと思います。

 

ちなみに南急は静岡の代理人だったのですね。もし一言ご相談くだされば,不正競争防止法は最近危ないですよ・・位のアドバイスは差し上げられたかもしれません・・などと思ったり・・