静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

平成30年(ワ)第27253号 著作権侵害差止等請求事件・・第三者にイラストの作成等を委託した場合にも,その作成経過を確認する等する注意義務が必要とされた事例

本件において,

・原告は,イラストレータ

・被告らは,いずれも加工食品の製造及び販売等を業とする株式会社であり, 代表取締役等の役員が共通する関連会社

・補助参加人は,カラーパッケージ等の企画,デザイン,製造,販売等を業と する株式会社です。

 

被告が依頼した補助参加人によって作成されたイラストが原告の著作権を侵害されたと認められたのですが,注意をすべきは以下のように業者に委託をしたとしても,その作成過程を確認して,著作権侵害が生じていないかを確認すべき義務が,委託する側に求められるとされ,過失が認められた点です。

 

したがって,イラスト等著作物の創作を依頼する場合には,契約書を支わし,受託者に自己の著作物であることを保証させるとともに,仮に第三者との間で著作権侵害等の問題が生じた場合には,受託者が自己の負担と費用で問題を解決するという条項を入れておくことが重要だと思います。

 

また,イラストを依頼する側としては,著作権を譲渡してもらうのか,使用許諾にとどめるのかというような判断をした上で契約を締結しておくことが重要です。

 

判決において,イラストレーターのイラストの著作権が侵害された場合の損害賠償額が少ないことを考えると,費用対効果の点から,イラストレーター等クリエーターは,インターネット等で自分の作品を公開する際に,自己に著作権が帰属し,無断で複製等すると著作権侵害が生じる旨を繰り返し警告しておくことが重要だと思います。

 

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2 争点2(被告らに著作権(複製権,譲渡権)侵害及び著作者人格権(氏名表 示権,同一性保持権)侵害について故意,過失が認められるか)について
ア 前記第2の2(1)イのとおり,被告らは,いずれも加工食品の製造及び販売等 を業とする株式会社であり,業として,被告商品を販売していたのであるから,そ の製造を第三者に委託していたとしても,補助参加人等に対して被告イラストの作 成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意
務を負っていたと認めるのが相当である。 また,前記認定のとおり,本件イラストと被告イラストの同一性の程度が非常に高いものであったことからしても,被告らが上記のような確認をしていれば,著作 権及び著作者人格権の侵害を回避することは十分に可能であったと考えられる。に もかかわらず,被告らは,上記のような確認を怠ったものであるから,上記の注意 義務違反が認められる。

イ したがって,被告らに著作権(複製権,譲渡権)侵害及び著作者人格権(氏 名表示権,同一性保持権)侵害について過失が認められる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・最高裁判所HPより