静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

相手方から示された契約書で注意をすべきところ

相手方から示された契約書で特に注意をすべきところは,片方だけ(自分だけ)義務を負っているところです。

 

双方が義務を負う場面で,相手方から示された契約書で,それ程無茶な条件が記載されていることはそれ程ないと思われるからです。

 

他方,片方のみ義務を負うことになっている場合については要注意です。

特にいわゆる特許等知的財産その他第三者の権利を侵害しない旨の保証条項や,第三者と問題が起こった場合に自分だけでその紛争処理を行うことになっていたり,相手方が損害賠償請求された場合に弁護士費用も含めて全て自分が負担することになっているような場合があります。

 

知的財産権に関する損害賠償請求ではいわゆる限定利益説という立場がとられており,原則変動費しか経費として売上げから引くことができません。人件費等固定費はなかなか引くことができないのです。

この点については本当に要注意です。

クラウドファンディングとアマゾン

クラウドファンディングで資金を集めてアマゾンで売る!

 

こんなビジネスモデルがうまく行ったという話を聞きました。

 

クラウドファンディングをやると検索上位に結果が残るので,ここからアマゾン等で販売する商品の宣伝になるというのです。

 

面白いですねー。

 

もちろんうまくいったのは商品がよいからだと思いますが,個人発明家の方等自分のアイディアを試してみたい方は参考になるビジネスモデルだと思いました。

フリーランスのイラストレーターの法律問題(5)・・使用許諾と著作権譲渡の違い

先日,知り合いのイラストレーターに取引先との契約書を見せてもらいました。

 

・一つは使用許諾契約書と記載されており,取引先はイラストレーターからイラストの使用を許諾される立場であり,取引先がイラストを使用できる範囲が明記されています。

 

・一つは委託業務契約書と記載されており,イラストレーターが取引先に著作権を譲渡すること(著作権法27条・28条を含む)と記載され,イラストレーターが著作者人格権を行使しないという条項が入っていました。

 

同じイラストの仕事でも,上記の二つはイラストレーターの権利が大きく異なります。

 

前者はイラストレーターに著作権が残り,また著作者人格権も行使できますので,例えば取引先が使用許諾した範囲を超えてイラストを使用したり,勝手に改変したりしたときには,著作権の行使や著作者人格権の行使により差止や損害賠償を請求できるのです。第三者が勝手にそのようなことを行った場合も同様です。

 

しかし,後者は著作権は取引先に譲渡し,しかも著作者人格権を行使しないという約束をしてしまっていますから,どのような使い方をされようと,イラストレーターは何もできないのです。

唯一取引先ではない第三者が同一性保持権等の著作者人格権を侵害した場合には,権利行使ができる程度です。

 

この違いは非常に大きいです。

 

後者のような契約についてよしとするなら,対価を高くしてもらう等のバランスをとる必要があるでしょう。

 

イラストレーターと話しをしていて,大学等では著作権について学ぶ講座はなく,イラストレーター等のクリエーターになった後も学ぶ機会はあまりないようです。

 

このような知識は仕事をする上で非常に重要だと思います。

契約は是非専門家と相談しながら進めるようにして頂きたいと思います。

 

その他にも契約にあたって気をつけるべき条項がありましたので,続きはまた記事にします。

フリーランスのイラストレーターの法律問題(4)何度も描き直しをさせられてイラストが完成しない。

何度も描き直しをさせられてイラストが完成しない。

 

イラストは請負契約にあたる可能性が高いので,完成しないと請負代金を払ってもらえないということになります。

 

そうすると,何回も書き直しをさせられて,いつまでも完成しないと対価がもらえないということになりかねません。

 

民法契約自由の原則があるので,公序良俗に反する等の事由がなければ比較的自由に当事者間で取引の仕方を決めておくことができます。

これは結構重要です。

関係性が良好なうちに取引方法をきちんと決めておくのです。

 

例えば

・打ち合わせ毎に日当が発生するように決めておく

・打ち合わせ回数の上限を決めておき,それを超えた場合には打ち合わせ1回毎に日当が発生するようにしておく

という方法が考えられると思います。

 

知り合いのイラストレーターによっては,お客さんのニーズを的確に引き出すことができればそんなに困ることはない・・・という人もいますが,色々な人がいますから。

 

関係性が良好なうちに,契約で要所要所で対価が発生するように約束をしておくというのは重要だと思います。

知的財産権の権利行使の相手方を誰にすべきか

例えば自社の特許権に関する商品を製造している企業が他の企業にその商品を販売し,当該企業がコンシューマーに販売しているとします。

 

そうすると,実施をしているのは製造・販売している企業と,それを買っている企業ということになります。

ライバルである製造・販売している企業に大きなダメージを与えたいということであれば,買っている企業に警告書を送りたいと思うこともあると思います。

 

しかしながら,不正競争防止法2条1項15号は

「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」

を規制しています。

特許権の侵害にあたるかは,最終的には裁判所の判断ということになりますので,後に侵害でなかったということになると,虚偽の事実を告知する行為となり,不正競争防止法違反で損害賠償請求の対象となってしまうことがあります。

 

したがって,原則としては,メーカーを相手方とすべきということになります。

ただし,メーカーが不明の場合もあると思います。その場合は表現等に細心の注意を払ってメーカーから買っている企業にレターを送る等の手段を考えることになります。

 

侵害警告をする場合,侵害の有無の判断,相手方の選定等専門的な判断が必要となりますので,専門家に相談して慎重に進めることが重要です。

弁護士と親密に付き合うことのメリット

弁護士と顧問契約をすると、メールや電話で気軽に相談ができるし、企業の様子を日頃から観察してもらえるので、何か起こったときや起こる前兆があったときに適切に対処してもらえるというメリットがあります。

 

最近中小企業の代表者等と話していて思うのは、そもそも法律問題かどうかわからないことについてでも、弁護士に話して、論理的に整理をするだけで、問題が解決することがあるということです。

 

弁護士は法律について知っているだけではなく、物事を論理的に整理をするという訓練も受けているからです。

 

顧問契約をして弁護士と日頃からよく話をするようにしておくと、問題の整理が簡単にできるようになり、業務の効率化にも資するのではないかと思います。

 

この前、産業カウンセラーの資格も持つ社労士や司法書士、弁護士と話していましたが、組織の問題は法律問題も含めてほとんど人間関係の問題ですね。

 

日頃から、第三者を入れて客観的な評価ができるようにしておくことは有用だと思います。

知財事件で弁理士・弁護士について思うこと

特許・意匠・商標・不正競争防止法著作権法等の知財事件をやっていると、弁理士と協同して代理をしたり、相手方が弁護士であったり弁理士であったりします。

 

最近思うのは

弁理士の良いところは

・特許明細書や仕様書等の論点となり得る箇所の指摘が的確である

という点です。

私が今一緒に仕事をしている弁理士は,明細書や仕様書等の技術的な点を本当によく見ていて,指摘箇所が適切で本当に助かります。

相手方が弁理士の事件も,指摘箇所の筋はよいなあと思うことが多いです。

 

弁理士の苦手なんだろうなと思うところは、

・上述のような指摘箇所からどのように論理的に思考すると結論に結びつくのかの説明が希薄なので,ここは行間をこちらが埋めながら読まなければならない。事実→結論に至る過程をもう少し説明してほしいと思うことが多いです。

・侵害事件に関してレスポンスが極端に遅い。

・依頼者の説得・コントロールができず,依頼者が言ったことをそのまま伝えてくることがある。

という点です。

 

侵害事件では相手方の意図を読み解き戦略をたてて段取りを組み提案して交渉するということが必要となりますが,対特許庁との仕事がメインの弁理士にとっては場数がまだ足りないため,どうしても悩みすぎてレスポンスが遅くなったり,依頼者を説得しきれなかったりするんだろうな・・と思います。

 

弁護士は論理的思考や交渉にはなれていると思うのですが,

・そもそも知財のことがあまりわかっていない場合がある

・言葉遊びのようにして論理を展開してくるので,発明や意匠の本質に迫る議論ができず,交渉が空転することがある

ということがあります。

 

弁理士と弁護士が協同すれば知財事件をサポートする人のスキルはもっとあがっていくのになあと思います。