静岡の弁理士・弁護士 坂野史子のブログ

静岡市で活動している理系の弁理士 弁護士です。静岡のぞみ法律特許事務所 http://www.s-nozomilawpat.jp

契約書はビジネスモデルを反映させる。

契約書のチェックや作成を依頼された際には,実際に行うビジネスがどのようなものか詳細にお聞きします。

 

その上で契約の内容がビジネスモデルを反映しているかどうか考えながら,依頼者ができるだけ有利な契約を締結できるように修正をしたり,条項を作成したりします。

 

契約書で驚いたのは,実際のビジネスモデルと関係のない内容が盛り込まれ,これに対して対価を支払うことになっていたり,知的財産権利者側の使用に大幅な制限がかかっていたりした例です。

 

このようなことが本当にあるのです。

BtoBの契約書の場合は,裁判所でも文言どおりに当事者が内容を理解して合意したとされることが多く,契約の際にそんな内容だとは知らなかったという言い訳は通用しないことが殆どです。

なお,こちらが対価をもらう側の場合には,確実に回収ができるように,相手の口座情報を入手する等の方法(後で仮差押等ができる可能性があるので)も一緒に考えておくことも有用です。

 

 契約書は1度専門家と一緒に相談しながら確認をすることをおすすめします。

 

簡単な法律相談であれば30分5000円で受けている弁護士も多いと思うので,1度相談してみてください。

私は個人事業主向けに月額1万円+税で法律相談3回パックを用意しています。結構お得だと思います。

商標登録は重要です。

商標登録についての相談で深刻なものに遭遇することがあります。

 

1件は数年使用してきた標章について,商標権者から警告書が来たというものです。

自分が使用してきた標章について商標登録出願はしていませんし,使用する前に特許情報プラットフォーム|J-PlatPatで他の人が商標登録をしていることも調べていませんでした。

数年使用してきて,ブランドが育ち,検索ワードとしても使用される頻度が高くなってきた頃に来た警告書です。

 

相談者の標章は商標登録出願の後から使用が開始されていました。

この場合,使用してきたというだけでは対抗する手段がありませんので,変更せざるを得ません。できるだけ類似と判断されないよう,また権利者とのもめ事をおさめることが目的なので,権利者が納得できる名称に変更せざるを得ません。

これまで育て来たブランドを捨てることになるのです。なんとも残念なことです。

 

 

その他の件としては,自分がオリジナルでデザインしてもらった標章を,第三者が勝手に商標登録出願をしたというものです。

もし自分が先に商標登録出願をしていれば,先に登録されているものと同一のものとして,知り合いの出願が登録されるはずはないものでした。

知り合いの出願については,出願時には情報提供,登録された後は異議申立,その後は無効審判という手段で登録を阻止するべくできるだけのことをすることになりますが,必ず阻止できるとは限りませんし,費用もかかります。

商標権と抵触する著作権等を有している場合には,対抗することはできますが(商標法29条),立証等面倒な問題は残ります。

 

いずれにしても,自分が使用するマーク等については,使用する前に特許情報プラットフォーム|J-PlatPatで調べ,出願や登録されているものがないかを調査しましょう。商標は商品・役務との関係で決まりますので,指定商品・役務との関係もよく見てください。

 

その上で,自分が使用するマーク等については,商標登録をすることをお勧めします。

なお,登録にあたっては審査を通過するための要件がありますので,出願を無駄にしないためにも専門家に相談して進めることをおすすめします。

相手方から示された契約書で注意をすべきところ

相手方から示された契約書で特に注意をすべきところは,片方だけ(自分だけ)義務を負っているところです。

 

双方が義務を負う場面で,相手方から示された契約書で,それ程無茶な条件が記載されていることはそれ程ないと思われるからです。

 

他方,片方のみ義務を負うことになっている場合については要注意です。

特にいわゆる特許等知的財産その他第三者の権利を侵害しない旨の保証条項や,第三者と問題が起こった場合に自分だけでその紛争処理を行うことになっていたり,相手方が損害賠償請求された場合に弁護士費用も含めて全て自分が負担することになっているような場合があります。

 

知的財産権に関する損害賠償請求ではいわゆる限定利益説という立場がとられており,原則変動費しか経費として売上げから引くことができません。人件費等固定費はなかなか引くことができないのです。

この点については本当に要注意です。

クラウドファンディングとアマゾン

クラウドファンディングで資金を集めてアマゾンで売る!

 

こんなビジネスモデルがうまく行ったという話を聞きました。

 

クラウドファンディングをやると検索上位に結果が残るので,ここからアマゾン等で販売する商品の宣伝になるというのです。

 

面白いですねー。

 

もちろんうまくいったのは商品がよいからだと思いますが,個人発明家の方等自分のアイディアを試してみたい方は参考になるビジネスモデルだと思いました。

フリーランスのイラストレーターの法律問題(5)・・使用許諾と著作権譲渡の違い

先日,知り合いのイラストレーターに取引先との契約書を見せてもらいました。

 

・一つは使用許諾契約書と記載されており,取引先はイラストレーターからイラストの使用を許諾される立場であり,取引先がイラストを使用できる範囲が明記されています。

 

・一つは委託業務契約書と記載されており,イラストレーターが取引先に著作権を譲渡すること(著作権法27条・28条を含む)と記載され,イラストレーターが著作者人格権を行使しないという条項が入っていました。

 

同じイラストの仕事でも,上記の二つはイラストレーターの権利が大きく異なります。

 

前者はイラストレーターに著作権が残り,また著作者人格権も行使できますので,例えば取引先が使用許諾した範囲を超えてイラストを使用したり,勝手に改変したりしたときには,著作権の行使や著作者人格権の行使により差止や損害賠償を請求できるのです。第三者が勝手にそのようなことを行った場合も同様です。

 

しかし,後者は著作権は取引先に譲渡し,しかも著作者人格権を行使しないという約束をしてしまっていますから,どのような使い方をされようと,イラストレーターは何もできないのです。

唯一取引先ではない第三者が同一性保持権等の著作者人格権を侵害した場合には,権利行使ができる程度です。

 

この違いは非常に大きいです。

 

後者のような契約についてよしとするなら,対価を高くしてもらう等のバランスをとる必要があるでしょう。

 

イラストレーターと話しをしていて,大学等では著作権について学ぶ講座はなく,イラストレーター等のクリエーターになった後も学ぶ機会はあまりないようです。

 

このような知識は仕事をする上で非常に重要だと思います。

契約は是非専門家と相談しながら進めるようにして頂きたいと思います。

 

その他にも契約にあたって気をつけるべき条項がありましたので,続きはまた記事にします。

フリーランスのイラストレーターの法律問題(4)何度も描き直しをさせられてイラストが完成しない。

何度も描き直しをさせられてイラストが完成しない。

 

イラストは請負契約にあたる可能性が高いので,完成しないと請負代金を払ってもらえないということになります。

 

そうすると,何回も書き直しをさせられて,いつまでも完成しないと対価がもらえないということになりかねません。

 

民法契約自由の原則があるので,公序良俗に反する等の事由がなければ比較的自由に当事者間で取引の仕方を決めておくことができます。

これは結構重要です。

関係性が良好なうちに取引方法をきちんと決めておくのです。

 

例えば

・打ち合わせ毎に日当が発生するように決めておく

・打ち合わせ回数の上限を決めておき,それを超えた場合には打ち合わせ1回毎に日当が発生するようにしておく

という方法が考えられると思います。

 

知り合いのイラストレーターによっては,お客さんのニーズを的確に引き出すことができればそんなに困ることはない・・・という人もいますが,色々な人がいますから。

 

関係性が良好なうちに,契約で要所要所で対価が発生するように約束をしておくというのは重要だと思います。

知的財産権の権利行使の相手方を誰にすべきか

例えば自社の特許権に関する商品を製造している企業が他の企業にその商品を販売し,当該企業がコンシューマーに販売しているとします。

 

そうすると,実施をしているのは製造・販売している企業と,それを買っている企業ということになります。

ライバルである製造・販売している企業に大きなダメージを与えたいということであれば,買っている企業に警告書を送りたいと思うこともあると思います。

 

しかしながら,不正競争防止法2条1項15号は

「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」

を規制しています。

特許権の侵害にあたるかは,最終的には裁判所の判断ということになりますので,後に侵害でなかったということになると,虚偽の事実を告知する行為となり,不正競争防止法違反で損害賠償請求の対象となってしまうことがあります。

 

したがって,原則としては,メーカーを相手方とすべきということになります。

ただし,メーカーが不明の場合もあると思います。その場合は表現等に細心の注意を払ってメーカーから買っている企業にレターを送る等の手段を考えることになります。

 

侵害警告をする場合,侵害の有無の判断,相手方の選定等専門的な判断が必要となりますので,専門家に相談して慎重に進めることが重要です。